逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃の内容物(胃酸や食べ物)が食道へ逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。食道は本来、胃のように強い酸に耐えるつくりではありません。そのため、胃酸が繰り返し触れると、胸やけやのどの違和感など、さまざまな症状が現れます。近年、日本でも患者数が増えており、生活習慣の変化や高齢化が影響していると考えられています。
逆流性食道炎は、命に関わる病気ではありませんが、放置すると症状が悪化したり、生活の質(QOL)が大きく低下したりすることがあります。早めに気づき、適切な治療や生活改善を行うことが大切です。
1. 逆流性食道炎の症状について
逆流性食道炎では、次のような症状がよくみられます。
胸やけ
胸のあたりが「焼けるように熱い」「ムカムカする」と感じる症状です。特に食後や横になったときに起こりやすく、多くの患者さんが最初に気づく症状です。
呑酸(どんさん)
口の中に酸っぱい液体が上がってくる感覚です。胃酸が食道を通って口の方まで逆流することで起こります。
のどの違和感
「のどがつかえる」「何かが張り付いている感じがする」などの症状が続くことがあります。これは胃酸がのどの粘膜を刺激するためです。
咳(せき)や声のかすれ
胃酸が気管の方へ刺激を与えると、慢性的な咳や声のかすれが起こることがあります。風邪と間違われることも少なくありません。
胸の痛み
胸の中央が痛むことがあり、心臓の病気と似ているため不安になる方もいます。検査で心臓に問題がない場合、逆流性食道炎が原因のことがあります。
2. 逆流性食道炎の原因について
逆流性食道炎は、主に「胃酸が食道に逆流しやすい状態」が原因で起こります。具体的には次のような要因があります。
下部食道括約筋(かぶしょどう かつやくきん)のゆるみ
食道と胃の境目には、逆流を防ぐための筋肉があります。この筋肉が弱くなると、胃酸が逆流しやすくなります。加齢や肥満、姿勢の悪さなどが影響します。
食生活の乱れ
脂っこい食事、甘いもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料などは胃酸の分泌を増やしたり、逆流を起こしやすくしたりします。
食べ過ぎ・早食い
胃に負担がかかり、胃酸が逆流しやすくなります。
加齢
年齢とともに胃と食道の働きが弱くなり、逆流が起こりやすくなります。
ストレス
ストレスは胃の働きを乱し、胃酸の分泌を増やすことがあります。
3. 逆流性食道炎の病気の種類について
逆流性食道炎は、大きく2つのタイプに分けられます。
① びらん性食道炎
食道の粘膜に「びらん(ただれ)」ができている状態です。内視鏡検査で確認できます。症状が強く出ることが多く、治療が必要です。
② 非びらん性胃食道逆流症(NERD:ナード)
内視鏡で見ても食道に傷はありませんが、胸やけなどの症状が続くタイプです。近年増えているとされ、ストレスや知覚過敏(刺激に敏感になること)が関係していると考えられています。
4. 逆流性食道炎の治療法
逆流性食道炎の治療は、「薬による治療」と「生活習慣の改善」が中心です。
薬物療法
医療機関では、胃酸の分泌を抑える薬がよく使われます。
代表的なものに、胃酸分泌自体を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」(ランソプラゾール、ネキシウムなど)、そして新しく即効性と持続性を持つ「P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)」(ボノプラザン/タケキャブなど)やH2ブロッカー(ガスター)などがあります。これらの薬は胃酸を減らし、食道の炎症を改善します。
生活習慣の改善
薬と合わせて、次のような生活改善が効果的です。
食べ過ぎを避ける
脂っこい食事や刺激物を控える
食後すぐに横にならない(2〜3時間は空ける)
就寝時に頭を少し高くして寝る
肥満がある場合は体重を減らす
禁煙する
ストレスをためないようにする
これらの工夫により、症状が大きく改善することがあります。
手術療法
薬で改善しない場合や、逆流を防ぐ筋肉の働きが極端に弱い場合には、手術が選択されることがあります。ただし、一般的には薬と生活改善で治ることが多いため、手術は限られたケースで行われます。
まとめ
逆流性食道炎は、胸やけやのどの違和感など、日常生活に影響を与える病気ですが、適切な治療と生活習慣の見直しで改善が期待できます。「最近胸がムカムカする」「のどの違和感が続く」といった症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。
